海外で特に去年猛威を振るったゲーム業界のレイオフは、今年もその流れが続く見通し、その背景とは?
2025/03/01

海外で特に去年猛威を振るったゲーム業界のレイオフは、今年もその流れが続く見通し、その背景とは?としていて、最近ではネットイースが中国国外に設立したスタジオを売りに出しているという噂が浮上して不安視させていますね。
昨年、ゲーム業界で大規模なレイオフが多発したが、2025年もこの流れは続くようだ。
直近でも、1月に『Dauntless』などの開発を手掛けたスタジオであるPhoenix Labs、2月には『Killer Instinct』等を開発したIron Galaxyがレイオフを発表。また、昨年にもスタジオ閉鎖やレイオフを実施してきたUbisoftも、1月にイギリスのスタジオであるUbisoft Leamingtonを閉鎖し、複数のスタジオの縮小とレイオフを行なった。2月中旬にはUnityも突然のレイオフを行なうなど、すでに企業の規模を問わず人員の削減が行われている。
2024年にはUbisoftだけでなく、マイクロソフトのXbox部門や、マイクロソフト傘下のActivision Blizzard、Riot Games、ソニー・インタラクティブエンタテインメントなど名だたる大企業がレイオフやスタジオ閉鎖などの人員削減を行なっていることを考えると、今年も大手・中小問わずゲーム業界で働く人材の生活は安定したものにはならないだろう。
■コロナ禍の収束・紛争・市場の変化。解雇の要因は複合的
こうしたゲーム業界のレイオフやスタジオ閉鎖の原因として上げられる要因は複数ある。コロナ禍の「巣ごもり需要」の反動や、国際紛争の影響によるインフレの加速などはその筆頭として上げられるだろう。
コロナ禍での成長の裏で過剰に採用した人員や、手を広げすぎた事業が、その終息後に負担として残り、国際紛争によって引き起こされたインフレが金利上昇につながった結果、資金調達も難しくなったというわけだ。
また、ゲームを取り巻く環境の変化も見逃せない。ゲームの開発期間は年々長期化し、開発費も高騰している。ただでさえヒットが予想困難なゲーム市場に基本プレイ無料のタイトルやサブスクリプションサービスが登場し、これまでのようなフルプライスの売り切りゲームでの収益化も難しくなった。基本無料のゲームも競争が激化し、リリース後わずかな期間でサービスを終了することも珍しくない。そもそも、ゲーム以外のエンタメ産業も多様化しており、ゲームのライバルは他のゲームだけでなく、動画配信サービスなどと可処分時間の奪い合いを繰り広げているのが現状だ。
こうした不安定な状況を背景に、中小規模のスタジオが大手企業に買収されることも少なくない。一見すると、大企業が中小規模のスタジオを救済しているように見えるが、その先にあるのは統合で不要になった部署やプロジェクトが切り捨てられる現状だ。また、プロジェクトの失敗による打撃も大きく、失敗が即レイオフやスタジオ閉鎖に直結してしまうこともある。
ゲーム業界における人員の削減の流れは、その原因が原因だけにしばらくは続くことだろう。また、今後は生成AIなどのツールが発展していき、ゲーム開発の効率化が進んでいけば、こうした状況に拍車がかかることも予想される。
■「日本企業はレイオフが少ない」と言われるが……
こうした現状のなかでも、日本のゲーム企業はレイオフが少ないことで有名だ。複数メディアが伝えているように、任天堂やカプコンといった日本企業は、賃上げを行なうなど人材への投資に積極的だ。これは日本企業の努力はもちろんだが、日本特有の従業員を保護する法律・制度により大規模なレイオフが難しいことや、長期雇用が文化として色濃いことも背景となっている。長期的に人材を確保でき、育成しやすいことは(ゲーム以外の産業でも)日本の強みといえるだろう。
もちろん、こうした日本型のモデルに問題がないわけではない。アメリカを筆頭に、海外の企業は労働者を解雇しやすく、昨日までは普通に働いていた人材が、朝起きたら突如解雇されたということもあるが、日本のように解雇しにくい環境は人材の流動性を損なうし、長期雇用には従業員のモチベーション維持が難しいというデメリットもある。それに加え、日本には少子高齢化による将来的な人材不足や、海外に比べ賃金が低いこと、長時間労働に代表される労働環境などといった、海外とはまた異なった課題が山積みだ。
■未来への展望
ここまでネガティブな話が続いたが、コロナ禍の収束以降鈍化しているとはいえ、ゲーム業界は成長を続けている。今後も、高騰する開発費に対応する形で、中規模なゲームへシフトしたり、低リスクなリメイク版を制作したり、サブスクやクラウドゲーミング、広告収益といったモデルを強固にしていくことなどの施策で、変化し続ける市場での新たな収益を獲得する道筋を確保できれば、徐々に市場規模を拡大していくだろう。また、AIは未知数ではあるが、今後AIを使用したクオリティの高いゲームや、AIを専門的に扱う新たな職が生まれるかもしれない。
とはいえ、そこで働く人がいなければゲーム産業は成り立たない。海外ではレイオフによる別産業への人材流出が原因で、日本は少子化で、未来を担うクリエイターの確保が課題となっている。各国・各企業ごとにおかれている状況は異なるが、未来のクリエイターのためにも、解雇しづらく、かつ働きやすい環境作りが必要なのは間違いないだろう。クリエイターあってこその「ゲーム」だということを忘れてはならない。
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レイオフも2種類あって、合理化という名のリストラや、本当に切羽詰まってのリストラと2種類ありますね。その辺は外資系の考え方がある場合と、会社が存続出来るかどうかの瀬戸際とで見解が変わりますね。